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コロナウイルス通信 2023年第10週 「長期障害でこれまでにわかっていること」

2023年に入ってから始めたこのコロナウイルス通信も、これで10回目になりました。コロナウイルス感染は人間がACE2受容体を持っている限り世界中で発生します。気候、食文化、そして入管の厳格さなど、地域差を引き起こすパラメーターはいくつかありますが、どこかの国で見られた現象はほぼ例外なく時間差を置いて他の国でも見られます。自分の国だけ特別だと思いたがる、という傾向も全世界共通です。なので、海の向こうで起こっていることを一週間分まとめて、読みやすい形で配信する、というのがこのブログシリーズの趣旨です。ただ、特筆すべきニュースを並べて書くのであれば当方のツイッターアカウントを読んでいただければ済む話ではあるので、今回は「だからなんなの」というところに焦点をあてて、読みやすくQ&A形式にしてみようと思います。


Q、なぜコロナウイルス感染がまだ重要なのですか?


A、現在、政府の政策判断に用いられるのは感染数、死亡数、入院数だけですが、実際には感染した人の一部が長期障害を負います。なので、感染数、死亡数、入院数の3つのパラメーターだけでは評価され得ないもう一つの側面があるのです。


Q、長期障害はなぜ重要なのですか?


A、長期障害を負った人の約80%は日常生活に支障をきたすようになることが分かっています。[リンク]  日常生活もままならなくなるので、当然仕事を続けるのは難しい人が大勢出てきます。たとえばアメリカでは、現時点で50万人から100万人の労働者が働けなくなったと推算されています。[リンク]


Q、どれくらいの割合の人が長期障害を負うのですか?


A、アメリカのCDCなどの予測では、感染者の約5人に1人が長期障害を負うとされていますが、最新の大阪市立大学の研究では感染者の約半数が長期障害を負うと分析されています。[リンク]


Q、コロナウイルスに感染してもほとんどの人は風邪程度の症状しか経験しないと言われていますが、それでも長期障害を負うのでしょうか。


A、感染時の症状の重さは、その後の長期障害の度合いと相関がないことが上述の研究のほか、多くの調査で分かっています。


Q、感染時の症状の重さが長期障害の度合いと関係がないのであれば、他に何か傾向はあるのでしょうか。


A、女性は男性よりも遥かに長期障害を負いやすいということが分かっています。その原因について深く調べた研究はありませんが、当社の分析ではエストロゲンが女性感染者の重症化を防ぐ一方、回復後にエストロゲン分泌量が減ることでその落差が様々な問題を引き起こしていると結論づけています。(詳細は割愛)


Q、長期障害はどのような症状を伴うのでしょうか。


A、最も顕著なのは、体を起こせないほどの倦怠感と、自殺衝動を含む強い抑うつ、不安感などの気分障害。その他、認知機能の低下や、免疫力の低下も引き起こします。


Q、倦怠感、抑うつ、不安感などは客観的に測定しづらいです。コロナウイルス感染からのPTSDなどではないのでしょうか。


A、今週のニュースで取り上げられた研究では、長期障害による倦怠感の強さは、脳の視床の萎縮と相関しており、短期記憶障害とも関連していることが分かっています。脳の体積が減少しているので、客観的に測定できます。[リンク]


Q、抑うつや不安感などの症状がなければ、長期障害による脳への影響はなかったと考えていいのでしょうか。


A、同じく今週ニュースになった研究結果では、不安や抑うつの症状がない患者の脳でも異常な脳機能的繋がりが生じていることが確認されています。また、実際にこれらの症状がある人の場合は、脳の記憶と感情を司る部位が物理的に縮小しており、重度の脳機能的接続異常が倍以上生じていることが分かっています。[リンク]


Q、ただの脳への異常であれば、少し経てば自然に治るのではないでしょうか。


A、自然に治るケースもありますが、遺伝子自体のオン・オフが健康な人と異なってしまっており(エピジェネティック的変化)、特に嗅覚と味覚、エネルギーを生産するミトコンドリアの代謝に関わる遺伝子の働きが抑えられてしまっていることが今週取り上げられた研究から分かっています。[リンク]


Q、初期の武漢では、主に高齢者が犠牲になっていたため、若い人たちは大丈夫な印象があります。


A、一般に、コロナウイルス長期障害の調査は医療サービスに助けを求めた患者が対象になっています。これに対して、医療サービスを受けなかった人も調査対象に入れると、高齢者よりも若年層の方がむしろ長期障害率が高かったということが分かっています。[リンク]


Q、長期障害は不快ですが死に至る病というわけではないのですね?


A、アメリカCDCは、この2月にコロナウイルス感染からの長期障害による死亡の場合の死因判定や定義をまとめたレポートを発表しました。つまり、長期障害によって死亡する人たちが無視できない規模に増えてきたのだと推測できます。[リンク]


Q、コロナウイルス感染による長期障害は、脳が異常になったりダルくなったりする病気なんですね。


A、脳や代謝への影響以外に、感染から30日経ったあとも急性膵炎を含む胃腸障害のリスクが少なくとも1年間に渡って上昇し、入院しなかった患者にも同様のリスクの発生が顕著だったという研究が発表されています。[リンク] また、感染から半年~一年の間に、心血管合併症の兆候である胸部の痛みをうったえる患者が多くいます。[リンク]


Q、長期障害はどうすれば防げるのでしょうか。


A、パキロビッドなどの抗コロナウイルス薬や、コロナウイルスワクチンが長期障害の発症率を下げるという研究もある一方、有意な効果は見られなかったという研究結果もあります。アメリカCDCは、長期障害を防ぐ最良の方法はそもそも感染しないことだとウェブサイトで発表しています。[リンク]


Q、そもそも感染しないようにするのが大事なんですね。


A、そういうことです。長期障害を負ってしまった場合の色々な症状への対処の仕方は当社のレポートの内容になってしまいますが、コロナウイルス感染前に心理的ストレスが強くかかっていた人は症状が重くなることが分かっています。普段からできるだけストレスを管理するようにして、適度な有酸素運動を続けていることが大事です。また、定期的に血液検査を受けることで、長期障害発症後の変化が自分で認識できるようになるので、普段から頻繁に健康診断を受けておくのもいいと思います。








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